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クリスティアーネ・ソイス・シェッラーChristiane Seuhs-Schoeller

NexTreams メンバー石井宏明/桑原香苗/山田希/安田健一

自分も周りも、
世界も楽にする仕事力

Profile

クリスティアーネ・
ソイス・シェッラーChristiane Seuhs-Schoeller

職業人生の大半を、起業家、国際ビジネスコンサルタント、そしてコーチとして過ごす。また10年以上に渡り、仕事の世界、パワーシフト、自己組織化について、成長するグローバル・コミュニティの中で積極的に参加。現在、自己組織化と目的に沿った仕事、さらにより大きな全体への奉仕における、愛と力の統合の分野における世界的なパイオニアとして世界各地で活動中。URL:https://christianesplace.com/

Q. NexTreamsのメンバーとクリスティアーネはどこで出会ったのですか?

桑原

2016年12月に、海外を1年旅してきた嘉村賢州くんが吉原史郎くんとティール組織やホラクラシーを日本に紹介した報告会があって。その流れで2017年3月にクリスティアーネにホラクラシー紹介のオンラインセミナーをやってもらったんです。私が通訳で。その打合せが初めての出会いでしたね。

クリスティアーネ

ちょっと運命的でしたね。4月末にはロードス島のNextStage Worldという集まりで初めて対面で会って、その直後から1年間のSPT(ソーシャル・プレゼンシング・シアター)コースでも偶然に同期で(笑)

桑原

その後ひろ(石井宏明)とのぞみーる(山田希)も参加したオグラボという有志グループでホラクラシーを使う実験を始めて。11月にはクリスティアーネと、ホラクラシーの開発者の1人トム(・トミソン)を招聘、日本で初めてホラクラシーや新たな法人形態を体験するワークショップを開催。日本の組織開発を牽引してきた方に「真に新しい時代が始まった」と言って頂いたのを鮮明に覚えています。その時に通訳としてのりちゃん(尾上典子)に手伝ってもらって。

山田

私はバックサポートをしていました。2018年4月には、ひろとHolacracyOne社のプラクティショナー・ワークショップに参加し、日本からの3人目と4人目になりましたね。その8月にクリスティアーネを再招聘して、ホラクラシーとランゲージ・オブ・スペーシズ(LoS)のワークショップを開催しました。けん(安田健一)はそのワークショップの参加者で、深く感動してくれたんですよね。

安田

ランゲージ・オブ・スペーシズで、仕事で生まれるテンションを4つの視点で区別することが新鮮でした。仕事をこれほど構造的に捉えられるのかと思い、そこに可能性を感じたんです。とはいっても当時はそのインパクトを捉えきれてはいませんでした。

桑原

その勢いで、2019年1月からシアトルでクリスティアーネが開催したLoS認定プログラムにひろ・けん・のりちゃん・私が参加して、いっしょに組織を作ろうと意気投合。その時は日本にいたのぞみーるとズームでつないでミーティングしましたね。

石井

そこでネクストリームズの名前が生まれました。

クリスティアーネ

嬉しいコラボレーションですね。その後LPPプログラムを2020年1月に開始、NexTreams全員が参加してくれました。2020年2月にはもう一度日本でLoSとLPPワークショップをさせてもらい、その後はコロナでオンラインに切り替えてLPPワークショップを共催してきましたが、類稀なコラボレーションだと思っています。

Q. なぜ、自己組織化や次世代組織の取り組みに魅了されたのですか?

クリスティアーネ

私は15年間、ビジネス・コンサルティングや組織開発、リーダーシップ開発を様々な国で行ってきました。人がともに働く場をより良いものにしたいという情熱を持っています。ワークショップの参加者は、深い気づきや変容を体験してくれました。でも、改革・改善の気持ちで満ち溢れて職場に帰っても、2〜3日すると今まで通りの状態やパターンに戻ってしまうことに気づいたんです。既存のシステムが人々を閉じ込めてしまうのです。そこで私は、自分の仕事について再定義を迫られました。私はケン・ウィルバーのインテグラル理論を読み始め、2009年にソシオクラシーとホラクラシーに出会いました。従来の方法に代わる組織運営システムで当時知られていたのが、この2つだったのです。そしてホラクラシーが、最善ではないけれど、私にとってはより魅力的で、よりシンプルで、より明確なシステムでした。そこから私の自己組織化の旅が始まったのです。
皆さんの旅路はどうだったのですか?

桑原

私は2005年に日本プロセスワークセンターという組織を立ち上げたのですが、プロセスワークを伝える組織としてその原理を体現したフラットで自由な運営をしたいと試行錯誤しつつ、果たせませんでした。2016年に賢州くんたちからホラクラシーの存在を聞いてすぐB・ロバートソンの「ホラクラシー」を読み、「これだ!できるじゃん!」と思ったのをよく覚えています。それを実際にやってみたくて、私も2018年11月にHolacracyOne社のプラクティショナー・セミナーに参加しました。

石井

2016年ごろ、当時のぞみーるとともに所属していた組織が、グローバルレベルで組織改変を試み、その時のグローバルメーリングリストに”本国ではReinventing Organizationsという本で勉強会をしている”という情報が流れてきました。その頃、私が個人的に感じていた課題は、”パーソナルコーチングやシステムコーチングで、個々の内面や関係性がよりよくなっていっても、結局は組織の仕組みや構造がそれを妨げてしまう、なんとかならないのか”ということでした。そのヒントになるのがこの本でした。そして、まだ「ティール組織」本が日本で出版される前に、同じ領域に関心を持ち活動をはじめていた吉原史郎さんや嘉村賢州さんと出会い、ともにオグラボを立ち上げて自らホラクラシー©での組織運営実験をはじめました。その後更に学びを深めるため、2018年4月にNYにて著者のF・ラルーに会い、HolacracyOne社のトレーニングを受講し、更に旅路が続くことになっていきました。

山田

ボランティア活動などではメンバーが対等に関わりあえるのに、営利企業で上司・部下という構造や権限などが絡んでくると組織運営が難しくなる感じがありました。何かいい方法はないかなと模索していたのですが、2016年ごろにReinventing Organizationsという本が面白いと聞き、読んでみて「これだ!」と。勝手に日本語訳を創って社内勉強会をしていたのですが、その後賢州さん主催の読書会に参加した後、オグラボに誘われて活動していました。

安田

メーカーに勤務していた時、独立後の事業再生支援などの経験から、組織の中で、トップも部下もヒエラルキーの中でオーセンティックパワーを使い切れずに、疲弊する姿をみてきました。そのころに組織開発を学び始めだしたのですが、その過程で2017年のホラクラシーワークショップ、2018年のランゲージ・オブ・スペーシズワークショップに参加し、自己組織化を知る旅が始まりました。

Q. 自己組織化の旅路をスタートさせてから、今の皆さんのいる場所を教えて下さい。

クリスティアーネ

今は、LoS(ランゲージ・オブ・スペーシズ)とLPP(ラブ・パワー&パーパス)を中心に活動しています。
話は戻りますが、ホラクラシーに大変感動した私は、欧州で実施された初期のホラクラシー・ワークショップに参加して自社で実践し始めたのですが、うまくいかず、最初のコーチ・トレーニングにも当時のビジネスパートナーと参加しました。でもビジネスパートナーは「ホラクラシーは理解できない」と言い続け、彼との関係は友情面でもビジネス面でも破綻したのです。本当に悲しいことでしたが、当時私が経験したことは、ホラクラシーの導入で多くの人が体験したことでもありました。
ただ私は、その原因はホラクラシー自体ではなく、他のことにあると思っていました。ホラクラシー・ワン社は当時「人の文脈」、つまり関係性や対人関係の側面に関心がなかったんです。トム・トミソンから「人の文脈」と「組織の文脈」を分ける考え方を聞いた時、「これだ!」と思いました。そしてコンステレーション・ワークやコーチング、内省ワークの経験を生かしてこの問題を探求し始めました。それが何年もかけて、人が自己組織化した働き方に移行する旅をサポートする非常に簡潔なフレームワークに成長しました。それがLoSです。

石井

私も、コーチングや組織開発ファシリテーションの中で、仕事での葛藤や痛みを取り扱うことが少なくありません。LoSはそうした問題やテンションをとてもクリアにしてくれます。自己組織化を目指す組織だけでなく、従来型の組織でも、とても有効なツールですね。純粋に仕事としてすべきことと、人間関係や自分の内面で起こることを区別して、実行可能な解決策を見出すコーチングなので。その力があると、自己組織化組織にも適応しやすいです。

クリスティアーネ

自己組織化への旅は、自分に気づく旅でもあります。自分自身が繰り返している感情や思考や行動のパターンに意識を向け、学び、責任を持つように誘うものです。簡単なことではありません。
これらのパターンの中に、パワーにまつわるさまざまなストーリーがあります。それが自己組織化された職場環境の中で自分の本来の姿をフルに表現することを難しくし、時には不可能にしているのです。権力の階層構造(パワー・ヒエラルキー)への恐れや抵抗から自分のパワーを発揮させないパターンが、自己組織化への移行への抵抗になるのを、私は何度となく観察してきました。
それが「パワーについてのナラティブ・ストーリーがシフトした時に何が可能になるのか」という私の好奇心に働きかけ始めました。その時までの私の人生のパーパス(目的)は、「私たちの仕事の世界や方法に、どのように愛をもたらすことができるか」でした。でも、愛の問題はいつも壁にぶつかりました。そこには何かが足りなかったのです。そこで香苗が「アダム・カヘンのLove and Power(邦題「未来を変えるためにほんとうに必要なこと」)を読んだことある?」と言ってくれたんです。NexTreamsとのコラボはいつでも共同学習の機会なんですよね。

桑原

2019年の来日の頃かな。

クリスティアーネ

そこから私はパウル・ティリッヒを読み始め、人生が変わりました。そして私はティム・ケリー(トゥルー・パーパス・コーチング(TPC)創始者)と一緒に自分の人生のパーパスを見直したんです。ネクストリームズの中にもTPCのコーチ認定をとった人がいますよね?

安田

ひろ、香苗、私です。

クリスティアーネ

その中で突然、「愛とパワーの統合」というパーパスが現れて、それはもう恐ろしかったです。その恐怖の後、まず、これはとても大きなものだと感じ始め、「これが欠けていたものだ」と気づきました。
これが今の私の仕事の中核をなしています。パズルのピースが見つかり、探求する方向性が定まりました。そしてラブ・パワー&パーパス(LPP)・プログラムが生まれ、2020年1月にシアトルで最初のリトリートを行いました。

香苗

そこに私たち全員が参加したわけですが、深い森の中で、人類を深く規定する古い物語を、本来の愛とパワーを十全に発揮できる新しい物語に書き換えるという豊かな時間になりました。組織運営と人の意識の共進化は私の仕事の中核でもあり、一歩先をいく実践者であるクリスティアーネから学んだことは、ほんとうに自然に私のクライアントワークにつながっています。

石井

人が組織の中でいかに活きるか、人がいかに活きられる組織をつくっていくか、これが私の今の仕事の中核です。特にこの4人で立ち上げたNexTreamsでは、想いや志を実現させるために、自分たちの組織構造をアップデートさせたい、そういうクライアントを対象に支援を実施しています。結果、今現在はNPO/NGOが中心となってます。なかなか楽な道ではなく、試行錯誤の連続ですが、それを苦に思ったことはありません。

山田

自己組織化の道は進めば進むほどこれさえやればうまく行く、という万能の処方箋があるわけではないと実感しています。組織の仕組みや習慣がどのように人の意識に影響を与え、その進化を支えられるのかは私のテーマでもありますが、ホラクラシーなどのOSを学ぶことと、自分にとっての愛やパワーを深めていくことはその両輪であり、いずれかが欠けても成り立たないと感じています。

安田

私以外のメンバーはホラクラシーのプラクティショナー経験者であり、私はNexTreamsの中では自己組織化の真の初心者でした。最初は、この独特のやり方に慣れることに必死で、この手法の効果を体感することなく、正直大変でした(苦笑)。しかし、ある時を境に、このやり方は真に民主的で効率的な手法だと体感することができました。この仕組みの中では、それぞれが感じたテンションは最大限に尊重され、その権限を行使することが可能です。同時に個人としてのパワーを行使していくこと、内面の統合を進め、アップデートさせていくことが常に求められます。そして、それは同時に学びと成長の機会でもあります。その意味では、自己組織化のクライアント支援に対して私の初心者としての経験が役立つこともあります。自己組織化組織は、個人個人が持つパーパスが組織のパーパスと響き合い、進化し続けていくプロセスがビルトインされています。人々にとって、組織にとって、そして世界にとってこれから必要不可欠なものです。こうしたスパイラル上の動きを支援することは、NexTreamsにとっても私自身にとっても常にチャレンジですが、好奇心をもって更に深めていきたいです。

*対談の続きはNoteで更新していきます。 https://note.com/nextreams2020